お墓のいらない(不要)、現代にあった新しい葬送 / 海洋葬・海洋散骨・手元供養

新しい葬送・海洋散骨・手元供養

お墓の必要性

ここ数年、葬儀や遺産相続のことなど、自分の死後どうするかといった話題が増えたように思います。例えばエンディングノート。一時期、テレビや新聞・雑誌などで話題になりました。エンディングノートとは、万が一の時、家族や親族が困らないように、葬儀や墓の希望など自分の意思を書き込んでおく冊子で、遺書と同等の効力を発揮します。このノートがここ数年、高齢者や団塊世代を中心に広まっているようです。「ニッポン・アクティブライフ・クラブ」(大阪府に本部を置くNPO法人・NALC)が03年から発売しているエンディングノートは、発売から5年間で10万部を突破しました。退職し社会から少し距離を置いた時、これから先のことを考えてみた時、「自分の最期」について考える人が増えているようです。

それと同時に、これまで当たり前のようにされていた“死後はお墓に入るもの”という固定概念から開放され、自然に還ろうとする考えが日本社会に広まりつつあります。以前、読売新聞が行ったアンケートによると、5割以上の人が「家の墓を必要としない」と答えています。その理由として、「お墓を継承する人がいない」「お墓を守る負担が子どもにかかるのではないか」「費用が高い」などが挙げられていました。これらの理由の主な原因として、現代の日本社会の問題となっている少子高齢化、熟年離婚、未婚者の急増、土地不足による墓地区画の高騰などが考えられます。高いお金を払ってお墓を建てても、お墓を維持し継承してくれる人がいなければいずれは無縁墓となってしまいます。こういったことから、「お墓は不要」「お墓には入らない」という考えが浸透してきたものと考えられます。また、霊園の造成による環境破壊の点から、お墓の必要性に疑問を感じる、という声もあげられます。

お墓に代わる葬送方法

そもそも、お墓制度はいつから始まったのでしょうか。実は、今のように家族の墓を持つことが一般的になったのは明治維新以降のことです。かつては、一部の階級をのぞいて庶民は遺体を山や海川に捨てるのが普通でした。しかし、江戸時代から庶民でもお墓を造るようになり、明治になって伝染病予防の為に火葬が普及し始め、現代のように火葬しお墓に納骨する、というスタイルが一般的となりました。家のお墓を持つようになったのは明治も30年を過ぎたあたりからだといわれています。この頃は日本の人口は増えるばかりで、お墓の継承を心配する必要はありませんでした。しかし、今はむしろその逆の状況にあり、以前のようにお墓を維持し継承していくことが難しくなりました。

お墓に代わる葬送方法として広まりつつあるのが、自然に還ろうとする自然葬です。自然葬とは主に、ご遺骨を粉末化した後、それらを海や山に撒く散骨という方法を指します。その中でも、海に散骨する海洋散骨を選ぶ人が多いようです。陸地だと限られた場所でしか散骨出来ませんが、海の場合は陸からある程度距離があり、漁場に影響のないところであれば散骨が可能です。
また、海は生命の源ともいわれますが、私たち人間の体も海に深く関わっています。私たちが母体にいる間は羊水の中で成長していきますが、この羊水は海水と同じような成分で出来ています。私たちが実際に海から生まれるわけではないですが、実は人間の体の仕組みに近い海に還ろうと思うのは、ごく自然のことかもしれません。

「散骨は違法ではないの?」と疑問に思う方もいると思いますが、法律上問題はありません。散骨を積極的に行ってきたNPO法人葬送の自由をすすめる会によれば、遺灰を海や山に還す行為は墓地埋葬等に関する法律や刑法の関連する規定にふれるものではなく、節度ある方法で行われる限り問題はないとしています。これに対し法務省・厚生省は「葬送の一環として節度をもって行われるのなら違法ではない」との見解を示しました。実際には、海洋散骨を行う場合には葬送の自由をすすめる会の定めたいくつかの自主ルールを守るのが一般的となっています。


・遺骨は粉末化する
・海岸付近はやめて、沖に出て散骨を行う
・養魚場・養殖場、航路を避ける
・遺灰は水溶性の紙につつむこと
・セロハンなど自然に還らない素材は使用せず、花びらだけを撒く

散骨・手元供養の時代

散骨には、個人散骨、合同散骨、代理散骨などがあります。個人散骨とは、船を貸しきって家族や親戚が乗船し散骨することです。合同散骨とは、数組の遺族が同じ船に乗り散骨を行う方法です。個人散骨よりもお金がかからないことが特徴ですが、乗船できる人数は限られているので注意が必要です。代理散骨とは、散骨を実施している業者に頼み散骨してもらうことが出来ます。忙しくて散骨に行けない、体調が良くないので船に乗れない、という方にお勧めの方法です。他には、船でなくヘリコプターで上空から海に散骨する、という方法もあるようです。

「故人の希望で散骨をする」という方の中には、全部を散骨してしまった後に心の拠り所を失い、長い間苦しい思いをする人もいるようです。このようなことがないよう、全部散骨するのか、一部だけにするのか、をよく考えてから散骨しましょう。人によっては、一部のみ散骨して残りをお墓に納めたり、一部の遺骨を自宅供養・手元供養という形で残す人もいます。海洋散骨をしたミュージシャンのhide(元X-JAPAN)は、遺骨の半分をロサンゼルスの海に散骨、半分はお墓に埋葬されました。お墓には今でも多くのファンがお参りに来るようです。このように、遺された人のことを考え、手を合わせられる対象を作ることも大切です。
先に「エンディングノート」の話をしましたが、ご自身の意思だけでなく、遺族のことも考えてあげることが大切です。故人の遺志に基づいて、墓を造らず遺灰もすべて散骨した結果、故人をしのぶ場がなくなり、遺族が喪失感を埋められず、苦悩する場合もあります。「自分らしい葬送を」と考えることはもちろん良いのですが、その際には残される人のことを思慮し、互いが納得のいく葬送をしましょう。

散骨を一部残す場合に、多くの人が手元供養という方法を選ぶようです。手元供養は、遺骨を骨壷やペンダントにして身近に置いておくことが可能です。一部を形にして残すことによって、遺族の心の拠り所をつくり、手を合わせられる状況をつくることが出来ます。今では手元供養の商品はたくさんの種類があり、ペンダントやブレスレットなどアクセサリーとして身につけられるようなものや、インテリアとしての機能も高い骨壷、遺骨を納められるテディベアなど、形も様々です。このように、一人ひとりの生活スタイルや希望に合わせてアレンジが出来るのも、散骨の魅力の一つといえます。
お墓に埋葬する場合も、散骨をする場合も、何よりも大切なことは、故人とその遺族が納得いく形で心安らかになれる供養が一番だということです。選択肢が多くなった今だからこそ、後悔しない葬送方法を目指しましょう。また、海洋散骨をする際にはルールを守り、故人が眠る海を大切することも忘れずにいましょう。

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